第111回薬剤師国家試験
◆ 問328
2 歳女児。母親に連れられ喫茶店にいたところ、母親が目を離した隙に、未使用の紙巻たばこを口に含んだ。母親は、女児を連れて直ちに喫茶店の向かいにあった薬局を訪れた。薬剤師が確認したところ、紙巻たばこの先端から2 cm 程度が噛みちぎられていた。女児には特に目立った症状はなく、顔色も良好であった。薬剤師が母親に提案する対応として、適切なのはどれか。2つ選べ。-
口の中に残っているものがあれば、取り除く。
-
口に含んだ後の経過時間及び状態を記録する。
-
牛乳を飲ませた後、胃内容物を吐き出させる。
-
経口補水液を飲ませる。
-
成分として薬用炭を含む一般用医薬品を服用させる。
◆ 問328
◆領域・タグ
◆正解・解説
正解:1、2
この問題は、家庭内で起こりやすい幼児の誤飲事故、特に「たばこ」を口にしてしまった際の緊急対応について、薬剤師として正しい知識に基づいた優先順位を判断できるかを問う実務的な内容です。
【誤飲時の基本方針】
たばこの誤飲では、ニコチンが急速に吸収されることを防ぐ必要があります。民間療法などで「何かを飲ませる」ことが推奨される場合がありますが、かえって危険を招くこともあるため、注意深い対応が求められます。
正解:1、2たばこの誤飲では、ニコチンが急速に吸収されることを防ぐ必要があります。民間療法などで「何かを飲ませる」ことが推奨される場合がありますが、かえって危険を招くこともあるため、注意深い対応が求められます。
1:口の中に残っているものがあれば取り除く
これが最も優先されるべき対応です。まずは口腔内に残っているたばこの葉などを速やかに除去し、これ以上のニコチン吸収を物理的に防ぐことが大切です。
2:口に含んだ後の経過時間・量・状況を記録する
ニコチン中毒の症状は時間経過とともに現れることがあります。「いつ、どの程度の量を、どのような状態で(乾いたものか、水に浸ったものかなど)」誤飲したのか、また現在の本人の様子(顔色、嘔吐の有無など)を正確に記録しておくことは、その後の医療機関での受診や救急相談において極めて重要な情報となります。
誤り:3、4、5
- 3:牛乳を飲ませた後、胃内容物を吐き出させる
無理に吐き出させようとすると、胃内容物が気管に入る「誤嚥(ごえん)」のリスクがあり、かえって状態を悪化させる恐れがあるため原則として禁忌です。また、牛乳などの水分を飲ませると、たばこに含まれるニコチンが溶け出しやすくなり、体内への吸収を促進してしまう可能性があるため不適切です。 - 4:経口補水液を飲ませる
この場面では、脱水症状への対応が主目的ではありません。水分を摂取させることは、上記のようにニコチンの吸収を早めてしまう懸念があるため、初期対応としては控え、まずは経過観察と状況把握を優先します。 - 5:薬用炭を含む一般用医薬品を服用させる
薬用炭は吸着剤として用いられますが、幼児に対する使用判断や、誤嚥の危険性を考慮すると、薬局での初期対応として家庭で自己使用させるべき内容ではありません。専門の医療機関の判断に委ねるべき処置です。
【実務のポイント:たばこ誤飲のひっかけに注意】
試験や現場で「何かを飲ませる」という選択肢に飛びつかないことがポイントです。
試験や現場で「何かを飲ませる」という選択肢に飛びつかないことがポイントです。
- まずは「取り除く」: 物理的な除去が第一歩です。
- 観察のポイント: 激しい嘔吐、顔色が悪い、ぐったりしている、けいれんが見られるといった症状がある場合は、直ちに救急車を呼ぶか医療機関を受診するよう指導します。
- 水に浸ったたばこはより危険: 灰皿代わりに水を入れた缶などに捨てられたたばこを誤飲した場合は、すでにニコチンが液中に溶け出しており、吸収が非常に早いため、より緊急性が高まります。
