第111回薬剤師国家試験

◆ 問329

 45歳女性。20歳頃より2~3ケ月に1回程度、閃輝暗点を伴う頭痛があり、近隣のクリニックで片頭痛と診断されていた。治療には、処方された鎮痛剤を用いていたが、数年前から症状が安定し、医師から一般用医薬品での対処で問題ないと言われた。その後、一般用医薬品で症状をコントロールできていたが、半年前から1ケ月に1~2回の頻度で頭痛が生じ、使用回数が増えてきた。日常生活にも支障をきたすようになり、痛みの予兆があると不安で気分が落ち込むようになったため、再受診した。女性は以下の処方箋を持って薬局を訪れた。

(処方)
ラスミジタンコハク酸塩錠 100 mg 1回1錠
           頭痛時 14回分

 この処方薬剤に関して、薬剤師が女性に説明する内容として、適切なのはどれか。2つ選べ。
  • 痛みの予兆があるときに服用すると、発作を予防できる。
  • 服用しても痛みが治まらない場合は、さらに1 錠追加服用する。
  • 服用後は、めまいや眠気に注意する。
  • 血管収縮作用による胸の痛みや圧迫感が現れることがあるので、注意する。
  • 使用過多により頭痛が生じることがあるので、注意する。

◆ 問329

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:3、5


この問題は、比較的新しい片頭痛治療薬であるラスミジタン(ジタン系)について、従来のトリプタン系薬剤との違いや、適切な服用タイミング、そして注意すべき副作用を正しく理解しているかを問う内容です。

【薬剤の特徴:ラスミジタン(レイボー®)】
・5-HT1F受容体選択的作動薬です。
・従来のトリプタン系(5-HT1B/1D作動薬)と異なり、血管収縮作用を持たないことが大きな特徴です。
正解:3、5
3:服用後はめまいや眠気に注意する
ラスミジタンの添付文書には、重要な副作用として「傾眠(眠気)」や「めまい」が明記されています。服用後にこれらの症状が現れる可能性があるため、自動車の運転や危険を伴う機械の操作などは控えるよう、患者さんにしっかりと伝える必要があります。

5:使用過多により頭痛が生じることがある
これは「薬剤の使用過多による頭痛(MOH:Medication Overuse Headache)」と呼ばれる現象です。片頭痛の急性期治療薬を頻繁に使用しすぎることで、かえって頭痛が慢性化してしまうリスクがあります。本症例のように服用頻度が増えている患者さんには、特に注意喚起が必要です。

誤り:1、2、4
  • 1:痛みの予兆があるときに服用すると発作を予防できる
    ラスミジタンはあくまで「頭痛発作が起きたとき」に使用する急性期治療薬です。添付文書には「片頭痛発作時のみに使用し、予防的には使用しないこと」と明記されています。前兆(キラキラしたものが見えるなど)がある段階で予防的に飲むものではありません。
  • 2:痛みが治まらない場合はさらに1錠追加服用する
    現在起きている頭痛が「全く改善しない」場合、その発作に対して追加で服用しても有効性は確立されていません。ただし、一度頭痛が消失した後に「再発」した場合には、24時間以内の総量(200 mg)を守れば再投与が可能です。
  • 4:血管収縮作用による胸の痛みや圧迫感が現れることがある
    胸部圧迫感(トリプタン・チェスト)は、血管収縮作用を持つトリプタン系薬剤に特有の副作用です。ラスミジタンは血管への影響がほとんどないため、このような症状の注意喚起は不適切です。
【実務のポイント:ジタン系とトリプタン系の使い分け】
薬剤師として最も押さえておきたいのは、血管への作用の有無です。
  • トリプタン系: 血管を収縮させるため、心筋梗塞や脳梗塞の既往がある患者さんには使用できません(禁忌)。
  • ラスミジタン(ジタン系): 血管を収縮させないため、血管系の疾患があってトリプタン系が使えなかった患者さんにとっても、新たな治療の選択肢となります。
ただし、中枢神経系への影響(眠気・めまい)はラスミジタンの方が頻度が高い傾向にあるため、生活スタイルに合わせたアドバイスが求められます。