第111回薬剤師国家試験

◆ 問333

70歳男性。前立腺がんによるがん性疼痛に対して、モルヒネ硫酸塩水和物徐放錠を服用していた。疼痛の悪化に伴い入院となり、骨転移に対して処方1及び2の薬剤が開始となった。

(処方1)
デノスマブ(遺伝子組換え)皮下注(120mg/1.7mL) 1バイアル
        1回120mg 皮下注射

(処方2)
デノタスチュアブル配合錠(注) 1回2錠(1日2錠)
        1日1回 昼食後 7日分

(注:沈降炭酸カルシウム/コレカルシフェロール/炭酸マグネシウム配合錠)

(開始時検査値)
血清アルブミン 4.0 g/dL、AST 10 IU/L、ALT 14 IU/L、
血清クレアチニン 0.88 mg/dL、血清カルシウム 8.3 mg/dL

 この患者に対して病棟担当薬剤師が行う服薬指導の内容として、適切なのはどれか。2つ選べ。
  • 処方1 の薬剤の開始後は、定期的な歯科検査を受けること。
  • 処方1 の薬剤服用中は、カリウム含有量の多い食品を積極的に摂取すること。
  • 処方2 の薬剤は、処方1 の薬剤の副作用を軽減するために処方されていること。
  • 処方2 の薬剤の副作用の症状として、テタニー症状があること。
  • 処方2 の薬剤は、かみ砕いたり、口中で溶かさずにそのまま服用すること。

◆ 問333

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:1、3


この問題は、骨転移の治療に用いられる抗RANKL抗体デノスマブと、その副作用を予防するために併用されるデノタス®について、適切な服薬指導の内容を問うものです。薬剤の作用メカニズムと副作用の因果関係を理解することが重要です。

【症例の背景】
患者: 70歳男性、骨転移のあるがん患者さん。
薬剤: 処方1(デノスマブ:ランマーク®)、処方2(デノタス®:カルシウム・ビタミンD・マグネシウム配合剤)。
正解:1、3
1:処方1(デノスマブ)開始後は定期的な歯科検査を受ける
デノスマブやビスホスホネート製剤の使用において、最も注意すべき副作用の一つが「顎骨壊死(MRONJ)」です。これを予防するためには、治療開始前から口腔内を清潔に保ち、開始後も定期的な歯科検診やクリーニングを受けることが極めて重要であることを説明します。

3:処方2(デノタス)は処方1の副作用を軽減するために処方されている
デノスマブは強力に骨吸収を抑えるため、血液中のカルシウムが骨に取り込まれ、血清カルシウム値が低下する(低カルシウム血症)リスクがあります。処方2(デノタス)はカルシウムやビタミンDを補充することで、この低カルシウム血症という副作用を未然に防ぐ、あるいは軽減する目的で処方されています。

誤り:2、4、5
  • 2:カリウム含有食品を積極的に摂取する
    デノスマブの投与において、カリウム値への直接的な影響や、カリウム摂取を推奨するような報告はありません。本症例で管理が必要なのは、カリウムではなく「カルシウム」です。
  • 4:処方2の副作用としてテタニー症状がある
    「テタニー(筋肉のけいれんやしびれ)」は、**低カルシウム血症**の代表的な症状です。処方2(デノタス)はカルシウムを補充してテタニーを防ぐための薬ですので、処方2の副作用としてテタニーが起こるという説明は、因果関係が逆であり誤りです。
  • 5:処方2(チュアブル錠)はそのまま丸のみする
    デノタスのようなチュアブル錠は、口の中で噛み砕くか、溶かして服用するように設計されています。そのまま丸のみしてしまうと、十分な効果が得られない可能性があるため、正しい服用方法を指導する必要があります。
【実務のポイント:デノスマブの三大注意点】
臨床現場で薬剤師が必ずチェックすべき項目は以下の通りです。
  • 顎骨壊死の予防: 歯科治療(抜歯など)の予定がある場合は、医師・歯科医師と連携し、休薬の検討などを行う必要があります。
  • 低カルシウム血症のモニタリング: デノタスをしっかり服用していても低カルシウム血症が起こる場合があります。指先のしびれや筋肉のつっぱりといった初期症状がないか確認しましょう。
  • 投与スケジュールの厳守: 骨転移の場合は通常「4週間に1回」のペースで投与されます。スケジュールが乱れると治療効果に影響するため、受診間隔の確認が大切です。