第111回薬剤師国家試験

◆ 問337

注射剤の吸着や配合変化に関する記述として適切なのはどれか。2つ選べ。
  • ニトログリセリンは輸液ルートに吸着するため、ポリ塩化ビニル(PVC)フ リーの輸液ルートを用いる。
  • ジアゼパム注射液には非水溶性溶媒が用いられているため、大量の輸液で希釈 し投与する。
  • アミノ酸輸液(リン酸塩含有輸液)にグルコン酸カルシウムを混合すると、難 溶性の塩を生成するため配合を避ける。
  • 注射用アムホテリシン B リポソーム製剤の希釈時には沈殿を防ぐために、生理食塩液を用いる。
  • オメプラゾールナトリウム注射剤にアルカリ性の注射剤を混合すると白濁する。

◆ 問337

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:1、3


この問題は、注射薬を患者様に投与する過程で起こりうる、医療器具への吸着や薬剤同士の化学反応による不溶性沈殿の形成など、安全な薬物療法を維持するための重要な注意点を問うています。

正解:1(ニトログリセリンはPVCチューブに吸着するため、PVCフリールートを使用する)
ニトログリセリンは脂溶性が高く、一般的なポリ塩化ビニル(PVC)製の輸液容器や輸液セットに対して非常に吸着しやすい性質を持っています。そのまま使用すると、実際に患者様の体内へ届く有効成分量が著しく低下してしまうため、吸着の少ないポリエチレン(PE)製や、可塑剤を含まないPVCフリーの輸液ルートを使用することが必須となります。

正解:3(アミノ酸輸液(リン酸塩含有)にグルコン酸カルシウムを混合すると難溶性塩を形成する)
多くの総合アミノ酸輸液にはリン酸塩が含まれています。ここにカルシウム製剤を混合すると、カルシウムイオンとリン酸イオンが反応して「リン酸カルシウム」という難溶性の沈殿が生じます。目に見えないほどの微細な沈殿であっても、血管内に入ると塞栓症を引き起こす危険があるため、同一バッグ内での混合や同時投与には細心の注意が必要です。

誤り:2(ジアゼパム注射液は大量の輸液で希釈して投与する)
ジアゼパム注射液は、水に溶けにくいためプロピレングリコールなどの有機溶媒を用いて製剤化されています。これを大量の輸液(水性)で希釈してしまうと、溶媒のバランスが崩れて主薬であるジアゼパムが再結晶化し、白濁や析出を引き起こします。したがって、原則として他の注射液との混合や希釈は避けるべきです。

誤り:4(アムホテリシンBリポソーム製剤の希釈に生理食塩液を使用する)
アムホテリシンBリポソーム製剤(アムビゾーム®)は、非常に繊細な製剤です。溶解には「注射用水」のみ、希釈には「5%ブドウ糖注射液」のみを使用しなければなりません。生理食塩液のような電解質を含む液を混ぜると、リポソームの構造が破壊されて凝集や濁りが生じ、本来の機能が失われてしまいます。

誤り:5(オメプラゾールNaにアルカリ性注射剤を混合すると白濁する)
オメプラゾールナトリウムなどのプロトンポンプ阻害薬(PPI)は、アルカリ側(pH 9〜10程度)で安定するように設計されています。問題になるのは「酸性」の薬剤と混ざったときであり、pHが低下すると急激に不安定化して白濁や変色を起こします。アルカリ性注射剤との混合で白濁するという記述は、化学的性質が逆の説明になっています。

【実務のポイント:配合変化を防ぐ原則】
現場で配合変化や吸着を防ぐために、以下の基本原則を徹底しましょう。
  • 添付文書の確認: 特に「適用上の注意」にある溶解液・希釈液の指定を遵守する。
  • 酸・塩基の意識: 極端にpHが高い、あるいは低い薬剤(PPI、フェニトイン、ビタミンCなど)は、他剤と混ぜないのが原則。
  • 吸着の回避: ニトログリセリンやインスリン、シクロスポリンなど、ルート吸着が有名な薬剤は専用セットの使用を検討する。