第111回薬剤師国家試験

◆問338-339

13歳男児。体重50kg。エピペン注射液0.3mg(注)の処方が記載された処方箋を持って母親とともに薬局を訪れた。薬剤師が情報収集したところ、男児は昼食にうどんを食べた後、屋外の運動場でサッカーをしているときに倒れたとのことだった。倒れたのは運動開始30分後だった。緊急搬送後、適切な処置により症状は消失し、その後小麦による食物依存性運動誘発アナフィラキシーと診断され、エピペン注射液を処方された。

[注:1管2mL、アドレナリンを2mg含有するプレフィルドシリンジ。1回に0.3mL注射される。]

 なお、2週間前にもパスタを食べた後にサッカーをしたところ、軽度のかゆみや発疹の症状があった。夜食にうどんやパスタを食べても異常はなく、空腹時にサッカーをしても異常はなかった。

◆ 問338

処方された薬剤の使用方法に関する説明内容として、適切なのはどれか。2つ選べ。
  • 注射前によく振ってから使用する。
  • 通常、臀部に注射する。
  • 緊急の場合は衣服の上からでも注射可能である。
  • 注射部位に垂直に針を刺す。
  • 残液がなくなるまで繰り返し使用可能である。

◆ 問339


◆ 問338

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:3、4


この問題は、アナフィラキシー発作時の緊急補助治療として用いられる「エピペン®」について、いざという時に迷わず正しく使用するための手順を問う内容です。13歳の男性が修学旅行に持参するという状況に基づいています。

正解:3(緊急の場合は衣服の上からでも注射可能)
アナフィラキシーは短時間で症状が進行するため、速やかな投与が何よりも優先されます。ズボンなどの衣服を脱がせる時間がない場合、そのまま衣服の上から注射することが認められています。公式の使用ガイドにも明記されている非常に重要なポイントです。

正解:4(注射部位に垂直(直角)に針を刺す)
注射部位である太ももの前外側に、エピペンの先端を「垂直」に押し当てて使用します。垂直に押し当てることで、確実に筋肉内へ薬液を注入することができます。

誤り:1(注射前によく振ってから使用する)
エピペンの公式な使用手順において、使用前に容器を「振る」という操作は含まれていません。緊急時に即座に使用できるよう設計されていますので、オレンジ色の先端を適切な部位へ押し当てる操作へ速やかに移ってください。

誤り:2(通常、臀部に注射する)
注射部位は必ず「太ももの前外側(大腿前外側部)」と決められています。臀部(おしり)は、脂肪層の厚さや重要な神経・血管の走行の観点から、緊急時の自己注射部位としては適していません。

誤り:5(残液がなくなるまで繰り返し使用できる)
エピペンは「1回使い切り」の製剤です。注射後にカートリッジの中に薬液が残っているのが見えることがありますが、これは構造上の仕様であり、一度作動させたものを再使用することはできません。使用後は速やかに医療機関を受診し、適切に廃棄する必要があります。

【実務のポイント:緊急時の指導内容】
患者様や学校関係者へ指導する際は、以下の3点を強調しましょう。
  • 場所: 太ももの外側(迷ったらズボンの上からでも良い)。
  • 角度: 垂直に、カチッというまで強く押し当てる。
  • 保持: 押し当てたまま数秒間静止して、確実に注入されるのを待つ。
また、使用した後は症状が一時的に改善しても、必ず救急車を呼ぶなどして医療機関を受診するよう伝えておくことが大切です。

◆ 問339

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:2、4


この問題は、13歳の男性患者様(小麦アレルギーおよびFDEIAの診断)に対し、修学旅行などの日常生活においてどのような点に注意すべきか、その適切な指導内容を問うています。

正解:2(小麦を含む食品を摂取した場合は食後の運動を避ける)
これがFDEIA管理における最も基本的な指導となります。FDEIAは「原因食品の摂取」と「その後の運動」が組み合わさることで発症するため、一般的には原因となる食品を摂取した後、少なくとも2〜4時間は運動を避けるよう指導します。これにより、血中への抗原吸収が促進されるのを防ぎ、発症のリスクを抑えることができます。

正解:4(エピペンを常時携帯する)
どれほど注意していても、不意に原因物質を摂取してしまったり、体調によって発症してしまったりするリスクはゼロではありません。万が一アナフィラキシー症状が現れた際の緊急対応として、アドレナリン自己注射薬(エピペン®)を常に手元に持っておくことは、命を守るために不可欠です。

誤り:1(運動は屋外を避け屋内で行う)
FDEIAの発症リスクに関わるのは「原因食品の摂取後の運動」そのものであり、運動を行う場所が屋内か屋外かは関係ありません。場所を制限する指導は本質的な予防策にはなりません。

誤り:3(水分補給で発症を予防できる)
運動中の水分補給は熱中症対策としては重要ですが、FDEIAの発症を直接的に予防するという医学的根拠は確立されていません。誤った安心感を与えないよう注意が必要です。

誤り:5(小麦の完全除去が必要である)
「完全除去が必要である」と断定してしまうのは不適切です。FDEIAの場合、運動を伴わない状況であれば摂取可能なケースも多く、過度な食事制限は患者様の生活の質(QOL)を著しく低下させる恐れがあります。最新のガイドライン等に基づき、原因食品の摂取と運動のタイミングを調整する個別指導が優先されます。

【実務のポイント:FDEIA指導の核心】
FDEIAの患者様への指導では、以下の「発症の引き金」を意識してもらうことが大切です。
  • タイミングの徹底: 「食べてから数時間は激しい運動をしない」というルールの遵守。
  • 増悪因子の理解: 運動だけでなく、体調不良、寝不足、アルコール、入浴、解熱鎮痛薬(NSAIDs)の服用なども発症を誘発・悪化させる因子となるため、併せて注意を促します。
  • 緊急時の備え: エピペンの携帯と、周囲(学校の先生など)への周知をサポートします。