第111回薬剤師国家試験
◆ 問343
78 歳女性。卵巣がん Stage Ⅳの腹腔内転移により再発し、化学療法を実施していたが、症状悪化に伴い緩和医療へ方針変更となった。大腸への浸潤により腹痛が出現し、緩和ケアチームが介入した。以下の処方で痛みのコントロールは不良で、経口摂取が徐々に困難となり、経鼻胃管の挿入を計画している。(処方)
オキシコンチン TR 錠 20 mg(注) 1回1錠(1日2錠)
1日2回 朝夕食後 10日分
(注:オキシコドン塩酸塩水和物徐放錠(乱用防止用製剤))
そのため、フェンタニル貼付剤へのオピオイドスイッチングを検討しており、主治医から病棟担当薬剤師へスイッチングの相談があった。バイタルサインは以下のとおりであった。

医師からの相談内容について、薬剤師が提供する情報として適切なのはどれか。
1つ選べ。
-
貼付後、速やかに血中濃度が上昇し、安定した鎮痛効果が得られる。
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スイッチングのタイミングとして、オキシコドン塩酸塩水和物徐放錠の最終投 与時から貼付を開始する。
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バイタルサインから、フェンタニル貼付剤の吸収率が増加すると判断できる。
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レスキュー薬としてフェンタニル舌下錠を用いる。
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フェンタニル貼付剤は、疼痛部位に貼付するとより効果的である。
◆ 問343
◆領域・タグ
◆正解・解説
正解:2
この問題は、がん疼痛の管理において、経口の徐放性オピオイド(オキシコドン)からフェンタニル貼付剤(パッチ)へ切り替える際の適切な手順を問うています。薬剤の血中濃度がどのように変化するかを考慮することが重要です。
正解:2(オキシコドン徐放錠の最終投与時に、フェンタニル貼付剤の貼付を開始する)
フェンタニル貼付剤は、皮膚からゆっくりと吸収されるため、貼付してから血中濃度が上昇し、安定した鎮痛効果が得られるまでには通常12〜24時間という長い時間がかかります。 一方、それまで飲んでいたオキシコドン徐放錠の効果は、最後に服用してから徐々に減衰していきます。 この「経口薬の効果が切れていく時間」と「貼付剤の効果が立ち上がる時間」を重ね合わせることで、鎮痛効果が途切れる時間(鎮痛の谷)を防ぐことができます。したがって、最終服用「時」に貼付を開始するのが適切なタイミングとなります。
誤り:1(貼付後、速やかに血中濃度が上昇し安定した鎮痛効果が得られる)
前述の通り、フェンタニル貼付剤の血中濃度の立ち上がりは非常に緩やかです。投与直後に速やかな効果を期待することはできないため、この記述は誤りです。
誤り:3(バイタルサインから吸収率増加と判断できる)
症例の体温は36.2℃であり、バイタルサインは安定しています。フェンタニル貼付剤の吸収を促進させる因子として「発熱」や「発汗」などが挙げられますが、本症例にはそのような所見は見られないため、根拠になりません。
誤り:4(レスキュー薬としてフェンタニル舌下錠を用いる)
フェンタニル舌下錠は、がん性疼痛における「突出痛」に対して用いられる薬剤ですが、その使用条件は「強オピオイドの定時投与により持続痛が適切に管理されていること」です。 本症例は現状で痛みのコントロールが不十分であり、スイッチングを行っている段階であるため、この適応条件を満たしていません。切り替え初期には、速効性の経口オピオイドなどをレスキューとして準備するのが一般的です。
誤り:5(フェンタニル貼付剤は疼痛部位に貼付するとより効果的である)
フェンタニル貼付剤は、皮膚から吸収されて全身の血液循環に乗ることで鎮痛効果を発揮する「全身投与型」の製剤です。胸部、腹部、上腕部、大腿部などに貼付すればよく、痛みの場所に合わせて貼る必要はありません。湿布のような局所作用ではない点に注意が必要です。
【実務のポイント:スイッチングの3つのキーワード】
フェンタニル貼付剤へ切り替える際は、以下の3点を意識して指導しましょう。
フェンタニル貼付剤へ切り替える際は、以下の3点を意識して指導しましょう。
- 最終服用時に貼る: 経口薬の残響と貼付剤の立ち上がりを重ねて「鎮痛の谷」をなくします。
- レスキューの準備: 貼付開始から血中濃度が安定するまでの間は、特にレスキュー薬(1日量の1/6程度)の使用が必要になります。
- 2日間は増量しない: 血中濃度が安定するまでに時間がかかるため、貼付開始後少なくとも2日間は安易な増量を行わないのが原則です。
